ネステナーの
耐荷重と耐震力

ネステナーの耐荷重と耐震力の注意点 / ネステナーの耐荷重と耐震力の注意点

(1) ネステナーの耐荷重と耐震力の考え方

ネステナー(ネスティングラック)はパレットラックに比べて作りも華奢に見え、固定もされていません。安全性について大丈夫なのか?と疑問に感じることもあると思います。実はネステナーの安全性はパレットラックより高いと言われています。太いパイプや固定していれば安心ということではないのです。
この記事ではネステナーの耐荷重と耐震力について、仕組みや種類、注意点をまとめています。この記事を読めばネステナーの耐荷重や耐震力が分かり、安全に運用していくための参考にすることができます。

(2) 耐荷重

2-1) 基本的な耐荷重

一般的なネステナーでは耐荷重1000kgのものが多くなっています。
細い4本の支柱で支えるネステナーはその外見とは裏腹に重い荷物に耐えることができます。各部位がしっかりと溶接されているので緩みもなく安定した強度があります。大切な荷物を載せる荷台部分は下からも補強され重い荷物に耐えられる構造になっています。

2-2) 段積みの耐荷重

ネステナーは縦に積み上げられることが大きな特徴です。段積みした場合の耐荷重は合計ではなくネステナー1台に載せられる重さで計算します。

正しい段積みの耐荷重計算(ネステナーを2段重ねた場合)

・1段目1000kgまで、2段目1000kgまでの荷物を積むことができる。

誤った段積みの耐荷重計算(ネステナーを2段重ねた場合)

・1段目2段目の荷物重量の合計が1000kgまで
・1段目2段目の荷物重量の合計を合わせて2000kgまで

ネステナーは規格によって【段積み可能な段数】が決まっています。この場合、1台当たりの耐荷重×段積み可能な数ではありません。耐荷重は1台の荷台に乗せることができる最大の重さです。
耐荷重1000kgで4段まで段積みが可能な場合、1段目に4000kgの荷物を載せて良いわけではありません。

2-3) 耐荷重に関する注意点

耐荷重はネステナーを安全に使うための大切な基準です。荷物を載せたときの衝撃や載っている間ずっとかかっている負荷を考えて決められています。想定していない負荷をかけ続ければ破損による倒壊や落下事故の原因となります。耐荷重の意味を正しく理解して使うことはとても大切です。
耐荷重はメーカーごと、または同じメーカーでも規格によって違いがあります。ネステナーだからこのくらい、と思い込みをせず必ず正しい耐荷重を確認して使用しましょう。

(3) オプションの耐荷重

3-1) 中間棚の耐荷重

【中間棚】とは、ネステナーの背の低い荷物を載せた場合、空いている上半分を効率的に使用するために1台のネステナーを中間で分割して棚を増やせるオプションパーツがあります。用途によって付け外しができるタイプと、特注により溶接されているタイプがあります。どちらの耐荷重も一般的には300kg~500kg程度となっています。

3-2) クリップ式中間棚の耐荷重

【クリップ式中間棚】とは、ネステナーのデッドスペースを効率的に使用するために4本の支柱に中央向きの突起が付いたクリップ取り付け、その上にパレットをのせることができるオプションパーツです。棚を追加するより簡単です。簡易的な見た目によらず耐荷重は取り付ける棚同様に300kg~500kg程度となっています。

3-3) 連結ブリッジの耐荷重

【連結ブリッジ】とは並列に並べた2台のネステナーの間を荷台で連結することで、本来4か所だった収納スペースを6カ所に増やすことができるオプションパーツです。連結ブリッジにはいろいろなサイズのものがありますが、一般的な耐荷重は500kg程度となっています。

(4) 耐震力

4-1) ネステナーの免震構造

ネステナーの耐震力は【免震構造】によって効果的で高い耐震性を持っています。
ネステナーはアンカーなどで床に固定せず押せば動くような状態です。段積みされたネステナーも頑強に固定するのではなく留め具を組み合わせて載せているだけでとても緩い状態になっています。
ネステナーは地震の際に固定されず、接地面や接続部が揺れを吸収することで全体の揺れを軽減し、倒壊を防いでいます。
揺れても倒れないのではなく、揺れを上手に逃がす【免震構造】の耐震力がネステナーの特徴です。

4-2) ネステナーの耐震力

例えば床に固定した高さ3段のラックが地震によって揺れると、ラックは揺れた状態から元の戻ろうとします。揺れに合わせて荷物も動き、ラックが戻る力も加わって反動で大きく揺れます。
接地面を固定しているとこれによって生じた揺れの力は接地面から遠い程強くなって大きく揺れます。やがて揺れ幅に耐えきれずラックやアンカーが破損して倒壊事故や荷物の飛来・落下事故が起こります。

ネステナーは各接続部が固定されていないことで自らバランスをとる仕組みになっています。
いままで起きた大きな震災時でも、固定式ラックが倒壊してもネステナーは倒れなかったという事例が多く残っています。また各メーカーで耐震試験も行い耐震力を証明しています。

参考動画:「【物流機器】逆ネス 耐震試験」(松井工業)
https://onedrive.live.com/?authkey=%21ABsSD%5FxZ%5FGcUJEU&cid=C4BC2973B4CC46FF&id=C4BC2973B4CC46FF%214085&parId=C4BC2973B4CC46FF%214096&o=OneUp

4-3) 耐震力に関する注意点

ネステナーは優れた耐震力を持っていますがそれだけでは防げない事故もあります。揺れによる荷物の落下や荷物のバランス悪化による倒壊などのリスクはあります。
ネステナーは状況に合わせていろいろな防災効果を持つオプションがあります。ネステナーに限らず、荷物の性状や重さ、倉庫の状況などを考慮して事故発生のリスク管理と対策は必ず行う必要があります。

(5) ピン式ネステナーの耐震力

5-1) ピン式の仕組み

ネステナーの支柱の上にピンとよばれる突起があり、重ねるネステナーの支柱下にある窪みにピンをはめることでネステナーを固定します。
がっちりと固定はせず、地震の際はあえて揺らいで動くようになっています。
ピンが通常と逆の下向き、穴が上向きの【下ピン式】や、ピンの先端が三角錐の形状で揺れた際に脱落しにくい【三角ピン】など、耐震力向上のために工夫が続けられています。

5-2) ピン式のメリット

ピンが穴にはまるというシンプルな構造のため破損しにくいのがピン式のメリットです。ネステナーを段積みした際の接続部は耐震力の要です。壊れにくく異常を発見しやすいのは事故防止の観点からも重要です。

5-3) ピン式のデメリット

段積みをする際に前柱のピンと穴がはまるように正確な位置で真上から降ろさなければならないため作業の慣れや技術が必要になります。また地震の際に揺れの大きさが許容範囲を超えるとピンが外れて落下の危険があります。ピンの外れ防止のため上下の接しているレールを固定することができる金具やバンドのオプションがあります。

(6) レール式ネステナーの耐震力

6-1) レール式の仕組み

三角の屋根のように折り曲げたレールがネステナーの上下に取り付けてあります。上下それぞれ三角の角度が上82°、下90°の角度になっていて、ネステナーを重ねた際にあえてかみ合わないようになっています。地震などでネステナーが揺れると、揺れを前後左右に吸収しながらレール自体は食い込んで外れにくくなるという構造になっています。

6-2) レール式のメリット

レール式は地震に強いということが大きなメリットです。左右の揺れだけではなく縦にも動くことができ、多方向の揺れに強い構造になっています。
レール式はピン式より段積みの際に載せやすいというメリットもあります。ピン式が点を合わせるように載せるのに対し、レール式は線に合わせて載せればあとは前後を調整すれば済みます。

6-3) レール式のデメリット

レール式はピン式に比べて耐久度はやや落ちます。ネステナーの溶接は頑強に作られていますがそれでも絶対に壊れないわけではありません。腐食や凹みによって耐久力が落ちている状態では負荷がかかったときにレール部が破損してしまうことがあります。レールに異常がないかは点検しておく必要があります。

(7) 耐荷重と耐震力の強化方法

7-1) 耐荷重の強化方法

ネステナーの1台の耐荷重はおよそ1000kgです。大きくすると強度が落ちる傾向があります。しかしこれが限界というわけではなく、特注に応じてくれるメーカーも多くあります。用途や理想の耐荷重を提示すれば1000kgを超える耐荷重にすることもできます。

7-2) 耐震力の強化方法

耐震力はネステナーのいろいろなオプションを活用することで強化することが可能です。
ネステナーの下に敷く耐震マットで揺れをさらに軽減したり、ネステナーの側面ガードやストッパーを取り付けることでパレットや荷物が飛び出さないようにしたりすることもできます。また複数のネステナーを連結することで基底面積を広げ、安定感を増すことも可能です。
倉庫や荷物の状態に合わせた耐震力強化を行いましょう。

(8) ネステナーの耐荷重と耐震力【まとめ】

ネステナーはピン式やレール式など耐震力に優れ、安全性には十分配慮された収納器具です。しかし耐荷重も耐震力も正しい使い方と異常がないか点検することが大切です。各メーカーが示している耐荷重や使用方法を守り安全に使いましょう。足りない機能はオプションによって補強することも可能です。今回ご紹介したネステナーの耐荷重や耐震力を参考にしていただき、荷物や倉庫に適した安全なネステナーの使用に役立てていただければと思います。